途上国といわれる国の生活
■本当の援助とは
途上国の貧しいといわれる人達は、先進国の私たちから見ればとてもきびしい環境の中で不幸せな生活をしているように見えます。
そこで手に入るものだけで家を建て、食べ物・水・薪などの生活必需品を確保し、多くの労力と時間を費やしながら苦難を乗り越え命をつないでいます。
ですが、その地域には、住む人を養うだけの資源があり、人々はその資源を利用し、ともに助け合いながら生きてきたのです。
読み書きは出来なくても、どの作物をどう育てればいいか、森に行けば、どこにどんな木があり、どう利用すればいいかをよく知っています。
そうやって、何千年もの間平和に暮らしてきたのです。
■貧困になる本当の訳:換金作物とは?
換金作物というのは、コーヒーやチョコレート、ゴムのように、自分たちが食べるためではなく、輸出して現金を得るために作る作物の
こと。
「貧困」が何故生まれるかについては、様々なパターンがありますが、
ここでは、換金作物を例にして流れを見ていきます。
@貿易
何千年もの間、自給自足をしていた村に先進国の人間がやってきて
「あなたの村と貿易したい」と申し出ます。
貨幣経済でない社会では、お金はただの紙切れなので、村は貿易を断ります。
しかし、「お金があれば病気の子どもを救う薬とたくさんの食糧が手に入る」と説得され、村は先進国との貿易に同意
します。このときから自給自足経済が、貨幣経済に変わります。
A村の死亡率が低下し、人口が増える
貿易を始めると、薬や食糧のお陰で村の死亡率が低下し、人口が増えます。
村人は豊かになったと喜びます。
そこにふたたび先進国がやってきて、「人も増えたし、薬も食糧も不足してきただろう。コーヒー畑を広げたら、
もっとたくさんのコーヒーが採れる」と提案します。
しかし、そうすると自給自足ができなくなるので、村は断わります。
そこで先進国は、「農地の半分をコーヒー畑にすれば、いまの2倍の薬と食糧が買える」と
提案し、村はふたたび同意します。
その結果、村の死亡率が大幅に下がり、人口が急増します。
Bコーヒーへの依存が高くなる
人口が急増した為、何年か経つと、農作物が足らなくなってきます。
しかし、すでに農地の半分がコーヒー畑に変わっていて、これ以上農地を増やすことは出来なくなっているのです。
そして先進国は、「すべての農地をコーヒー畑に変えれば、さらに多くの薬と食糧が手に入る」と提案します。
村は、ここで選択を迫られますが、先進国の交渉術と圧力により同意することになります。
C自給自足の崩壊
すべての農地がコーヒー畑に変わり、自給自足体制が完全に崩壊します。
村人は、コーヒーの収入により金銭的に豊かになり、喜びます。
人口も急激に増え、繁栄しているかのようです。
ところが、同じ土地で同じ作物ばかり栽培し続けた為、特定の成分が土壌から失われて作物の収穫量・品質ともに低下してきたのです。
D化学肥料と農薬の使いすぎで土地が死ぬ
先進国は、「化学肥料と農薬を使えば、品質も収穫量も戻る」と提案します。
化学肥料と農薬のお陰で、品質も収穫量も戻りましたが、ある年にコーヒーの病気が発生しました。
化学肥料をまくことで生態系のバランスが崩れ、虫が取りついたのです。
DDTという農薬を先進国から購入して散布したら、病気が消えました。
でも、すぐに別の虫が取りつき、DDTでも効果があがらなくなります。
その為、次々と化学肥料や農薬を買うことになり、繁栄していた村が、少しずつ貧しくなっていきます。
E階級が生まれる
先進国は、まとめてひとつの大きな畑にすると効率が上がることを、話しのわかりそうな村人に教えます。
先進国とその村人の働きかけで、地主と小作人のような関係が生まれ、やがて階級制度に繋がります。
地主は自分の才覚と先進国の助けを借り、次第に力とお金を蓄え、小作人を安い賃金で働かせるようになります。
そのうち、先進国は「ブルドーザー等の大型機械を使えば、もっと儲かる」と売りつけます。
こうして人手が余り、生活に困った人々が難民となるのです。
F増える借金
高価な機械を買った地主も、莫大な借金を抱えることになります。
死に掛けた土地には、余力もなく、コーヒーは安価に買い叩かれる為、金利も払えなくなります。
それでも、コーヒーを安く売るしか方法がなく、借金はますます膨らんでいくのです。
そのうち完全に土もダメになり、残ったのは、荒れ果てた土地と、増え過ぎた人口、そして莫大な借金です。
G先進国は立ち去り、内戦が起こる
もう、作物による商売が出来なくなった先進国は、次の商売を考えています。
飢えや苦しみによる怒りをどこにぶつけていいかわからない人々に対して、「武器」を売るのです。
地主には「身を守るための武器」として、小作人には「権力と戦う武器」として。
こうして、階級間や部族間で、武力衝突や政治紛争(内戦)が始まるのです。
この例は、貧困に至るひとつのケースです。
多少、乱暴な表現や捉え方もありますが、急激な人口増加により貧しくなった国は、ほとんどこのルートをたどっています。
ソマリアとエチオピアはコーヒー、インドはコショウ・綿・紅茶、ブラジルはコーヒー、ゴム、トロピカルフルーツが原因で一時的に豊かになり、
やがて人口爆発と貧困の問題を引き起こしました。
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